排卵障害と不妊症
更新日:2021年11月22日
こんにちは!
処方箋なしで病院の薬が買える薬局(零売薬局)アリス薬局の薬剤師 山田明里紗です。
卵巣内で卵胞が成熟しない、あるいは成熟卵巣の外に卵子が排出されないのが排卵因子障害です。
目次
一生のうちに排出される卵子の数は約400~500個
女性はうまれたときには、卵巣内に原子卵胞が約200万個存在し、それが思春期になるころには、30万個までに減少し、そのあとも減り続けます。毎月約1000個の原子卵胞が目覚め、そのうちの1個が成熟して排出されます。 一生のうちに排出される卵子の数は約400~500個ほどになります。(12歳で初潮があり、50歳まで排卵月経があると卵子約456個の排出)
排卵とホルモンの関係
①間脳の視床下部から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)によって、脳下垂体が刺激される。
②下垂体から、卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌され、卵巣内の卵胞の成熟を促す。
③成熟した卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌される。
④卵胞ホルモン(エストロゲン)が放出されると、その働きで下垂体から黄体ホルモンが出て卵子を排出される。
⑤卵子を排卵した後、卵胞は黄体というものに変化します。
⑥そののち黄体からか黄体ホルモン(プロゲステロン)が放出されます。)
このように排卵はホルモンと密接に関係しています。
無排卵月経
実は月経があるからといって、必ずしお排卵が起きているとはかぎりません。したがって初潮がはじまってもしばらくの間は排卵のない無排卵性月経であることが多いです。 この無排卵性月経は、精子的な悩みやストレス、ダイエット、ホルモン系の病気などによって大人になってから起こるものもあります。
排卵障害(無排卵)になるとでてくる様々な症状
- イライラ
- 肩こり
- のぼせ
など、更年期障害に似た症状が現れます。
飲み薬での治療
排卵誘発剤(セキソビット、クロミッド、HMG-FSH製剤)
排卵の有無を調べる検査
排卵の有無を調べるためにも、まずは基礎体温をきちんととることが重要です。
●ホルモン分泌検査(血液検査・尿検査)
排卵を促すホルモンや卵巣から出るホルモンがどの程度分泌されているかを調べる検査です。
●甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモン分泌検査(血液検査)
排卵や月経に関係の深い、甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモンの分泌を調べる検査です。
●子宮頸管粘液検査
排卵が近づくと、子宮頸幹部(子宮の入り口)から分泌される粘液が特徴のある性状になります。その分泌液を顕微鏡で調べてみると、排卵期の粘膜は、シダ状に結晶しているので、卵胞の発育の有無が判断できます。
●卵巣の超音波検査
超音波検査により、卵巣の画像を診断します。卵胞の発育状態や卵胞の消失、および腹水の出現があるかどうかを見ることで、排卵の有無がわかります。
●ホルモン剤を投与して反応を見る
排卵に関わるいろいろなホルモン剤を投与し、排卵・月経が起きるかどうかをみます。
このような各種検査を行って、どの部分に排卵障害が起こっているかを調べます。
排卵障害の原因とその治療法
中枢性:性腺刺激ホルモンの分泌不足による排卵障害
〇性腺刺激ホルモン分泌障害性腺刺激ホルモンが不足すると、卵巣の中の卵胞が成熟しなくなります。成熟卵胞ができないと排卵が起こりません。異常が起こる原因として、・特発性・ストレス・肥満・やせすぎ・甲状腺機能障害・高プロラクチン血症
〇下垂体性無排卵 下垂体腫瘍やシーハン症候群などが下垂体性無排卵にあたります。治療では排卵誘発剤を使用して、卵胞の発育を促進させます。
卵巣性:卵巣の病気や機能不全、発育不全による排卵障害
卵巣の病気には、早発閉経(早発卵巣機能不全)やターナー症候群などの性腺発育不全、卵巣手術・放射線・抗がん剤による後遺症などにより排卵が起きず、不妊になる場合があります。 また、早発閉経などの卵巣性月経では、現在のところゆうこうな治療法は確立されていません。ただし、カウフマン療法を行っていると、自然の卵巣発育と排卵がみられることがまれにあります。
心因性
精神的なことが原因で起こる、ホルモン分泌抑制による排卵障害
検査の結果、特に生殖器には異常がみられないのに排卵が起こらない場合、心因性の無排卵が疑われます。
精神的な悩みやストレスがあると、自律神経の中枢が乱れ、間脳の視床下部が脳下垂体に対して卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの分泌を抑制する指令をだすために、排卵が起きなくなってしまいます。
これを、心因性の無排卵といいます。
無排卵から無月経になると、イライラや肩こりやほてりなどの書状が起こることがあります。
排卵障害の治療を受けているうちにイライラや肩こりやほてりなどの症状は自然に改善されてくることがほとんどです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSとは、卵巣のなかの卵胞細胞が成熟しないために卵子が成育せず、しだいに卵巣の表皮がかたくなって排卵しにくくなる病気です。 排出されない卵胞はそのまま卵巣のなかたに溜まってしまうので、卵巣が腫れるという症状が現れます。
多嚢胞性卵巣症候群の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、黄体化ホルモン(LH)や男性ホルモン(テストステロン)が分泌されると卵巣の代謝が悪くなるのではと考えられています。
多嚢胞性卵巣症候群の治療には、排卵誘発剤の飲み薬を使用し、効果がない場合は、直接卵巣を刺激するFSH製剤を注射します。
FSH製剤の注射がよく効きますが、なかには過剰反応で卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を引き起こす人もいますので注意が必要です。
また手術をすれば排卵は可能です。
腹腔鏡下に卵巣表面をレーザーや電子メスで多数の穴を開けることにより、卵巣のホルモン分泌に変化を起こさせ、自然な排卵を誘発することもできます。
また体外受精を行う際には、多数の卵子を採取し、良好な胚を1個だけ選んで子宮に戻すことにより、多胎妊娠を予防することも可能です。
その他
その他にも高プロラクチン血症、甲状腺ホルモン分泌低下、黄体化未破裂卵胞があります。甲状腺ホルモン低下症の場合h、甲状腺ホルモン剤の投与、黄体化未破裂卵胞の場合は、経過観察、場合に応じて、卵胞穿刺術(膣から針を入れて卵巣に刺して卵胞液を吸引する処置)などが行われることがあります。
排卵障害と漢方薬
排卵誘発剤を注射しないと排卵しなかった方が漢方薬のみで排卵し妊娠に至った例もあります。しかし、漢方単独ではなく、基本的に婦人科の治療と併用することで、妊娠しやすい体づくりを底上げし、妊娠率を上げていくのが一番の近道になります。
①卵胞が成熟不全の場合
→腎虚
②排卵した卵子がうまく育たない場合
→腎虚、お血、痰飲
③月経周期の異常
→気滞
●軽度の場合
→活血薬、化痰薬+補腎薬
●中~重度の場合
生理周期に合わせて服用する薬剤を変更する。周期療法がおすすめです。
・生理~低温期
→ 強力な活血化痰薬
・高温期
→補腎薬
気滞症状がある方は、柴胡や芍薬などベースに持つ方剤が効果的です。
排卵障害・無月経の方は今行われている治療や生活改善と合わせて漢方薬を併用していただくことで、ご自身の体における最短の治療期間にたどり着くことができます。
それぞれの漢方薬のタイプ診断は
薬剤師
山田 明里紗
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