妊娠中の糖尿病予防
更新日:2021年11月22日
こんにちは!
処方箋なしで病院の薬が買える薬局(零売薬局)アリス薬局の薬剤師 山田明里紗です。
妊娠糖尿病は、妊娠中に気をつけたい病気の1つです。
妊娠糖尿病は母体や胎児の合併症のリスクを上げるだけでなく、産後の女性や生まれてきた赤ちゃんにも影響を与えるため、注意しなければいけません。
本記事では、妊娠糖尿病について詳しく解説していきたいと思います。
妊娠糖尿病とは?
妊娠糖尿病とは、これまで血糖値に異常がなかった人が、妊娠中に血糖値が高くなる糖代謝異常のことです。
妊婦さんの7〜9%が、妊娠中に「妊娠糖尿病」と診断されています。
特に近年、妊娠糖尿病は増加傾向にあり、晩婚化や晩産化が影響していると言われているのです。
原因
妊娠糖尿病は、妊娠中期頃から分泌される「プロゲステロン」や「プロラクチン」「コルチゾール」といったホルモンが影響していると言われています。
これらのホルモンは、血糖値を下げる「インスリン」が効きにくくなる作用があり、その結果、妊娠中に血糖値が上がりやすくなるのです。
また、妊娠中は「サイトカイン」というタンパク質が脂肪組織から分泌されます。
これも、インスリンの作用を抑えるため、妊娠中の血糖値上昇に影響を与えているのです。
症状
妊娠糖尿病は、自覚症状はほとんどありません。
そのため、自分で気づくということはあまりなく、妊婦健診で診断されるというのが一般的です。
検査方法
妊娠糖尿病は、採血による「随時血糖法」で検査します。
まずは、妊娠初期に随時血糖法で血糖値の検査を行い、その結果、血糖値が高い場合には「ブドウ糖負荷試験」を行います。
また、妊娠が進むとインスリン(血糖を下げるホルモン)が効きにくくなるため、妊娠初期に問題がなくても、妊娠中期に再度検査を行います。
※「ブドウ糖負荷試験」とは、75gのブドウ糖の入った検査用のジュースを飲んだあと、一定の時間をあけて血糖値を検査する方法。
妊娠糖尿病が与えるリスク
妊娠糖尿病は悪化すると、胎児や母体に合併症を起こすことがあります。
ここでは、妊娠糖尿病が悪化した場合の、胎児や母体に与えるリスクについて、ご紹介します。
胎児に与える影響
・巨大児(体重4,000g以上)
・心臓肥大
・流産
・死産
・早産
・低血糖
・多血症
・黄疸
・電解質異常
・先天性奇形
母体に与える影響
・妊娠高血圧症候群
・羊水量の異常(羊水過多など)
・難産(巨大児出産によるもの)
・網膜症
・腎症
また、出産後も妊娠糖尿病と診断された女性や、その女性から産まれた赤ちゃんは、将来的に糖尿病やメタボリック症候群を発症するリスクが高くなることがわかっています。
妊娠糖尿病になりやすい人
下記の項目に1つでも当てはまる方は、妊娠糖尿病になりやすいため、注意が必要です。
・肥満体(BMIが25以上)
・高齢出産(35歳以上)
・妊娠中に体重が急増した
・家族に糖尿病の人がいる
・出生体重4,000g以上の赤ちゃんの分娩歴がある
・羊水過多
・先天奇形児の分娩歴がある
・妊娠高血圧症候群と診断された(または過去に診断されたことがある)
・尿糖の検査で陽性が続いている
・原因不明の流産や死産、早産の経験がある
妊娠糖尿病の治療法
妊娠糖尿病の基本的な治療は、食事療法です。
食事療法を続けても改善されない場合は、インスリン注射や入院が必要になることもあります。
一般的な糖尿病では、内服薬(飲み薬)を使用することもありますが、妊娠糖尿病の場合は、胎児への安全性が確認されていないため、安全で確実に血糖値を下げることができるインスリン注射を行うのです。
妊娠糖尿病を予防するには?
妊娠糖尿病を予防するためには、妊娠中だけでなく妊活中から、バランスの良い食事や適度な運動を取り入れることが大切です。
特に、食物繊維(根菜類や野菜、きのこや海藻など)は、食後血糖の急激な上昇を防ぐ効果がありますので、積極的に摂りましょう。
また、血糖値の急激な上昇を抑えるために、食事の食べる順番も意識してみてください。
野菜→汁もの→主菜(肉や魚)→主食→(ごはんやパン、麺など)
上記の順番を心がけることで、血糖値の上昇を抑えることができるため、妊娠糖尿病の予防に効果的です。
妊活中の食事や運動について、詳しくは下記の記事をご覧ください。
関連記事:【妊活中の食事】必要な栄養素とは?
関連記事:妊活中に必要な運動の頻度や時間
薬剤師
山田 明里紗
この記事を書いた人
専門家の紹介